TRPG自作シナリオ作成法 #4【シナリオ設計作業】

TRPG自作シナリオ作成法 #4【シナリオ設計作業】

ども、ikarushです。

今回はTRPG自作シナリオ作成法 #4【シナリオ設計作業】です。

解説の前にちょっと余談。

「NPC(ノンプレイヤー・キャラクター)の生い立ちとかないワケ?」
「話の流れは良いんだけど、情景描写や背景が良く分からないよ」
この街の規模ってどのくらい?可能であればこの街の住人に顔見知りがいる設定にしたいんだけど…」

みなさんはGM(ゲーム・マスター)としてプレイしていて、各PL(プレイヤー)からこんな質問を受けた事はないですか。

もしくはPC(プレイヤー・キャラクター)を演じるにあたり、このような疑問や質問をGMに投げかけた事はないでしょうか。

これらの設定はシナリオを作るうえで重要な要素。
しかしシナリオを「お話」と定義してしまうと、情景や設定などは意外に疎かになって「まぁ適当で良いか」と進めると、後から辻褄が合わなくなる…なんて事もあったりします。

今回の「シナリオ設計作業」は、これまでご案内してきたTRPGシナリオ・フレームワーク。

(オリジナルシナリオフック+シナリオランダム決定)×NPCの立ち位置

その外にあるもの。

シナリオに関連する状況の確認事項や、PCが登場する舞台などを設計する内容を案内します。

なお、これまで紹介してきたオリジナルシナリオの骨組みの組み立て方については、以下の記事をご覧ください。

TRPG自作シナリオ作成法 #2【シナリオフックとシナリオランダム決定】

TRPG自作シナリオ作成法 #2【シナリオフックとシナリオランダム決定】

2019年4月10日

また、上記骨組みとして作成したシナリオに登場するNPCの立ち位置。
このNPCのありかたについての記事を、以下のブログよりご覧いただけます。

TRPG自作シナリオ作成法 #3【NPCの立ち位置設定】

TRPG自作シナリオ作成法 #3【NPCの立ち位置設定】

2019年4月13日

上記2つを作った段階で「シナリオできた!」は、まだ少し気が早いです。

シナリオが展開される時期や季節はいつですか?
街や村の規模はどの程度?
その町や村にはどの程度の民がいて、何を生業として生活しているのですか?
どんなお店があるんでしょうか?
街道を進むとその先はどこに通ずるのですか?

詳細な情報があればあるだけ、シナリオの充実度もあがります。

これら質問の答えを普段から用意している方はここで読むのを控えてもらっても良いですが、答えに窮する方は本稿でその設定について考えていきましょう。

TRPG自作シナリオ作成法 #4【シナリオ設計作業】

シナリオ設計作業

今回も先に結論として、当ブログ記事にて紹介する項目を挙げます。

シナリオ設計の主な項目
舞台:シナリオの展開される場所

背景:シナリオが展開される場所の状況

導入:主要キャストであるPCがシナリオに関連する状況を描くための事前情報

(絶対)条件:シナリオを成立させるために最低限守るためのルール

固有名詞とデータ:上記4項目を作成後に設定するもの、シナリオを具現化させる情報

また上記設計項目とは関係ないですが、シナリオを作るうえでF.E.A.R.製TRPGで使用される「シーン制」の考え方が非常に分かりやすいと感じているので、シーン制を踏まえたシナリオの設計についても解説を行います

項目別に詳細確認したい場合は、当見出しの上に目次がありますので、そちらから必要な個所をご覧ください。

それでは順に解説をしていきます。

シナリオ設計①:舞台

シナリオ設計①:舞台

舞台とはいわゆる冒険する場所、「世界」と言い換えても良いでしょう。

例えばこの地球での物語であれば「地球」や「ユーラシア大陸」「アジア」「日本」などが舞台になります。

ただゲームの舞台を伝える中で「今回は日本が舞台です」と言われてもピンときません。

より具体的には「地名」や「町などの拠点名」になりますね。

「川崎」や「浦安」、「池袋駅」などと言われれば割とイメージが湧きます。

逆に詳細に設定する必要はありません。

例えば「舞台は渋谷のヒカリエです」という必要はありません。

もちろん渋谷のヒカリエ以外の場所に行かないのであれば、それは舞台になりえますが、ヒカリエの外に1歩でも出るのであれば「渋谷駅周辺」や「東京の新宿よりも南側ら辺」など大まかな設定が良いでしょう。

シナリオ設計②:背景

シナリオ設計②:背景

背景とは、シナリオを進める前提の既知の情報のようなもの

つまり各PCが事前情報として「今どういう状況なのか知っている・分かっている」という内容です。

なお気をつけてもらいたいのは上記した「舞台」の背景ではなく、これから展開される「シナリオ」の背景ということ。

前項のヒカリエで言うと良く分からないので、ここではファンタジーの世界を思い浮かべてもらいます。

その町は平和なのか。

春夏秋冬の時期は何なのか。

街の外はモンスターでいっぱいなのかなど、ルールブックに載っているいないにかかわらず、PCに事前情報として案内しておくべき最低限の状況説明と言えるでしょう。

シナリオ設計③:導入

シナリオ設計③:導入

導入とは「どういった流れでそのシナリオに入っていくか」という、シナリオ展開前の設定になります。

これは各PCの状況によって多少異なります。

例えばシナリオ発生位置をGM側で完全に設定しておいて、「特定のPC(仮にAさんのPC)が人相の悪い男と肩が当たった事でイチャモンをつけられる」としていた場合、AさんのPCが道を歩く状況が必要になります。

逆にGMとしてはPCが全員集まっている状況で、依頼人を登場させようと考えているにも関わらず、各PCが各々の登場シーンをバラバラに演出していては、話が進まないでしょう。

他にも各メンバーが仲間でも顔見知りでも何でもなく、「シナリオの都合から仲間になっていく展開」を演じさせたい場合などは、ある程度シーンによりPCの位置を固定させる必要が出てきます。

これらはGMそれぞれ、シナリオそれぞれで柔軟に考えられれば最良ですが、PCが各々自由に登場したいがGMがそれを一切許さないなど、妥協できない状況があるとお話(シナリオ)そのものが破たんしかねません。

初心者GMやコンベンションで自作シナリオを展開する場合は、ある程度GM側で導入内容を決めてしまいましょう。

PCは「自由にどうぞ」と言われても、初心者やPC同士が顔見知りではない場合はなかなか動きづらいので、登場シーンや場所を固定してあげた方が親切です。

逆に仲間内でプレイしている状況であれば、ある程度PCの自由にさせると良いでしょう。
自由は困るというPCがいるならば、PC間で集合場所を決めてもらいその場所にいるようにする。

他にもGMとして勝手に(そのPCの)演出をして登場させても良いですし、他の仲間PCと連れだって行動してもらうなども良いでしょう。

要はシナリオの展開上、差し障りない登場の仕方であれば良いのです。

また登場シーンをPCに全フリする事も問題です。

PCの登場シーンを予めGM側で想定しておき、その上で「自由にどこにいるか決めても良い」と伝えれば、仮に登場について悩んでしまっても元の設定が活かせるようになります。

シナリオ設計④:(絶対)条件

シナリオ設計④:(絶対)条件

条件は導入に少し似ていますが、ここでいう条件とは、シナリオをプレイする上で「絶対的な」条件についてです。

例えばシナリオが国家機密に関わる(可能性がある)のであれば、PCの誰かが国家機密に関係する設定・ポジションが必要でしょう。

ハリウッド映画の1シーン。

ホワイトハウスに参集する大統領や大臣、高官らの面々の中にレベル1のPC達がいて「アメリカの命運は君たちに託された!」という展開になったら、アメリカはその時点で間違いなく滅ぶでしょう。

学校内の恋愛シナリオであれば、男子校・女子高舞台のまま最後まで進めるのは(LGBTには失礼ですが)、条件として噛みあわないでしょう。
(最初から最後までギャグ、もしくはLGBTならアリですが…)

他にも伝説の杖に関連するシナリオで、PCの1人を伝説の魔法使いに仕立て上げたい!という部分が話の根幹であれば、杖を装備できるだろうクラス(メイジ等)がいるのが条件になると考えられます。

脳筋戦士しかいないPC達の中、NPCの魔法使いが出てきてお話のお株を奪ってしまったら、もしかしたらPCからブーイングが来る事もあるかもしれません。

シナリオ設計⑤:固有名詞とデータ

シナリオ設計⑤:固有名詞とデータ

コレ!と思う地名やアイテム名、NPC名などはシナリオを作成しながらではなく、後から考えるのが良いでしょう。

自分の場合、シナリオプロット作成段階では大抵「NPC1、2、3…」などと書くに留めておき、具体的なシナリオを作成するタイミングでその名称を作成します。

ネーミング以外のデータも同様で、最初からエネミーやアイテムの設定は行いません。

プロット上でも「エネミーと戦闘」、「クライマックスに続く鍵的アイテムを手に入れる」と書いておき、後から詳細なデータを作成します。

この利点は2つあります。

1つはシナリオプロットを仮組み程度に作成してから何週間・何か月も寝かせる場合、シナリオ再編集時点で改めて具体的なデータに落とし込むので、ゲームのシステム・PCのレベルや人数に左右されない事。

もう1つは新しいアイデアを思いついた時に、すぐに変更できる事です。

例えば「シナリオボスの部屋を開くための鍵」を言葉通り、「シナリオボスの部屋を開くための魔法の鍵」とすると、それ以上の効果はアイテムの中に入れられません。

しかし後日「アイテムではなくキーワード(言葉)にしよう!」と思いついたら、それはアイテムではなくなります。

もしくは「武器」などに設定する事で「ボス戦ための鍵」であり「武器」でもある、という2つの設定ができ、シナリオが終了した後でもPCが大事に扱ってくれるアイテムになるかもしれません。


なお自分がネーミングを設定する際にヒントにしているのが以下の本です。

シナリオ作成時以外に開く事はほとんどありませんが、ネーミングに困ったら割と開くとアイデアが思い浮かびます。

平和な街道、自然名の洞窟、廃墟になった城、変わった雰囲気の店など、ニュアンスで捉えているものをイメージしてパラパラとめくり、アイデアを巡らせます。

例えば「林檎街道」という名を思いついたとしましょう。

旅の乗合馬車に乗りながら、サッと手を伸ばすだけでアレレ?不思議だな手の中に真っ赤な林檎が…

なんてエピソードを交えると、その話だけでPC間でてんやわんや話が広がるでしょう。

林檎街道を想起する画像

またそこから少し外れて「ミリャ街道」と呼ぶとします。

ミリャは「林檎」のギリシャ語読みらしいですが詳細は分かりません。
分かりませんが乗合馬車の御者さんが「ミリャって何かわかるかい?」などとPCに質問して、そこから林檎と分かる。

実はこの林檎園を管理している方がミリャさんと言う方でねぇ…などとすると、雰囲気がより一層深まるでしょう。

そこから「ギリシャ語しばり」を自分に設けて、他の地名もギリシャ語で探すと楽しいかもしれません。

購入は数年前ですし似たような本は数冊出ているので、自分の気に入ったものであれば何でもいいと思います。

普段から眺めるというよりは、アイデアが無い時に眺める程度にするといいと思います。

シーン制システムからシナリオプロットを作成する

シナリオ設計の話は終わりにして、今度はシナリオの構成や流れについてです。

シーン制システムとは冒頭でご紹介した通り、F.E.A.R.製TRPGやログ・ホライズンTRPGなどで見ることが出来る、お話を場面別に展開して進めるシナリオシステムです。

【参考】シーン制|wikipedia

シーン制の詳細はここでは割愛。

良い面も悪い面もあるのは分かりますが、起承転結を踏まえた分かりやすいシナリオ展開を考える上では、シーン制の骨組み部分はプロット作成に役立ちますのでお話させてください。

起承転結とシーン制

起承転結という言葉をご存知でしょうか。

またシーン制にはシナリオフェイズ制という考え方があり、これが起承転結と結びつきが強く話の展開が分かりやすくなっています。

これら2つを合わせて解説すると、以下のようになります。

①起=オープニングフェイズ
お話の始まりであり導入。各PCがシナリオに関連する状況を描く。

②承=ミドルフェイズ
お話の導入から真相を突き止める間までの状況を描く。

③転=クライマックスフェイズ
お話のヤマ場で結末に進む直前の状況、F.E.A.R.製TRPGでいうところのボス戦に当たる。

④結=エンディングフェイズ
お話の結末、どのようにお話が締めくくられるのかが語られる。

ちなみにここでお伝えしたいのは「この自作シナリオ作成法はシーン制で考えています」というのではなく、シーン制でシナリオの構成を考えると筋道が明確で分かりやすいよと言いたいのです。

上記解説で足りない部分を補足しながら、シーン別に解説します。

シナリオプロット①:オープニング

オープニングとはお話の導入に当たる部分。
各PCがシナリオに関わっていく状況を表すシーンです。

この部分は上記したシナリオ設計の「導入」が主な内容。

各PCがどこにいて、どこでシナリオが発生して、どのようにシナリオに関わるのか。

深く考えなくても良いですが「5W1H(だれが・いつ・どこで・なぜ・なにを・どのように)」を捉えておくと、ブレの小さい明確な情景として設定が出来ます。

桃太郎でいうところのおじいさん・おばあさんの各キャラクターが各々で行動している所で、おばあさんが洗濯中に大きな桃が~(中略)~成長した桃太郎が「鬼、コロす」と出発するシーンまでがオープニングと言えるでしょう。

シナリオプロット②:ミドル

ミドルは、お話の中盤です。

オープニングから引き継いでシナリオの真相を解明すべく、各PCが情報収集や実際の行動に移すシーン

すぐにミドルを始める前にオープニングの状況を整理してから始めると、話の筋道や目標・目的が明確化されるのでオススメです。

シナリオ的には各種判定で必要なデータ、ダンジョンやエネミー(敵)のデータなども取り揃えておきます。

桃太郎で言えば・犬猿雉が仲間になり、鬼ヶ島に船で上陸する辺りまでがこのミドルです。
もう少し進んで、さぁこの門をくぐれば鬼がいる!というところまで考えても良いでしょう。

シナリオプロット③:クライマックス

クライマックスはお話のヤマ場で、ファンタジー世界観の物語であればシナリオ最大の障壁となるボス戦が考えられるシーンです。

ボスがいなくとも、判定によるダイスロールなどからクライマックスを演出する事もあるでしょう。

桃太郎で言うところの鬼退治でチャンバラしてる場面が、このクライマックスです。

いずれにせよこのクライマックスの如何によって、どのようなエンディングを迎えるのかが分岐する重要なシーンと捉えれば良いでしょう。

シナリオプロット④:エンディング

エンディングはお話の終着点で、どのような結末になるかが語られるシーンです。

桃太郎でいうところの「鬼退治後」のエピローグですね。

自分の知っている桃太郎では、鬼が持っていた金銀財宝を持ち返ったという話ですが、帰る途中を描いても良いですし、持ち帰った数年後の世界を描くのも良いでしょう。

継続するシナリオであれば、次のシナリオへのバトンタッチ的な(伏線的な)シーンを描くと、PCのシナリオへのモチベーションも持続するかもしれません。

TRPG自作シナリオ作成法 #4【シナリオ設計作業】:まとめ

TRPG自作シナリオ作成法 #4【シナリオ設計作業】

最後に項目別の解説概要も交えて、まとめます。

シナリオ設計の主な項目
舞台:シナリオの展開される場所

背景:シナリオが展開される場所の状況

導入:主要キャストであるPCがシナリオに関連する状況を描くための事前情報

(絶対)条件:シナリオを成立させるために最低限守るためのルール

固有名詞とデータ:上記4項目を作成後に設定するもの、シナリオを具現化させる情報

シナリオプロット設計
オープニング:シナリオの導入部

ミドル:シナリオの中盤

クライマックス:シナリオのヤマ場やボス戦

エンディング:シナリオの結末

なお舞台や背景については、プレイするTRPGシステム別に刊行されている各種ワールドガイドを一読しておくと公式情報が分かる他、PCから変なツッコミを入れられても焦らず立ち回れるので便利です(笑)。

【参考図書】

また起承転結やシナリオフェイズ制について細かく考える必要はありませんが、詳細を確認したい方は、記事内に設置したwikiへのリンクや、シナリオフェイズ制を扱っているF.E.A.R.製TRPGのリプレイを1冊読むのも手です。

なお、ターン制のwikipediaの中に「ログ・ホライズンTRPG」とありますが、ログ・ホライズンTRPGのターン制は名称が独特で且つシーンが細かく分類されているため、一般的なプロットデザインを考える当記事との連動を考えるとオススメできません。

読み物としては面白いのでオススメしますが、起承転結を踏まえたシナリオフェイズ制を学習したいのであればF.E.A.R.製TRPGのリプレイを1冊読むほか、実際に自作シナリオを組んでみて、紹介したシナリオプロットの作成法と合っているかを確認すると良いと思います。

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